« 京都で前後不覚になるの巻 | メイン | 保護観察付き執行猶予――裁判員制度とは何か »

もうすぐまる3年の四谷の机から――『ろう者の世界』のことなど

2006年9月の創業から、もうすぐまる3年になろうとしている。8月末の時点で出した本は全部で43点、うち2刷以上となったのが9点である。がんばったといえるのかどうか、それは自分の評価ではなく世間・読み手の皆さんの評価にまつしかないが、とにかく多くの優れた書き手の皆さんに支えられてここまで来れた、そのことだけは間違いない。

2刷以上となった9点のうちで、最高の4刷となったのが2点、木村晴美さんの『日本手話とろう文化』、それに、これも木村さんがかんで作っていただいた、全通研宮城県支部編の『手話と法律・裁判ハンドブック』である。お仕事をご一緒させていただくようになって3年というのに、未だに手話を学ぼう話せるようになろうという姿が見えてこない問題ありの私に対し、本当によくしていただいている。なにせ、ろうコミュニティの力が強い。口コミ・直販での売れ方が他の本たちとはまったく違うのだ。

その木村さんの大好評『日本手話とろう文化』の続編『ろう者の世界――続・日本手話とろう文化』が出た。まえがきで木村さんはこう書いている…

「『ろう文化』と言うなと意見されることもあるが、それは譲歩できない。なぜなら、ろう文化はマイノリティ文化だからだ。聴者という大多数の文化の中で、ともすれば埋もれてしまうものだからこそ、発信し続けなければならない。多数派の文化は特別のアピールをしなくとも、その存在が忘れられることはない。しかし、ろう文化のように少数派の文化は、常に発信しその存在をアピールしなければ、埋没し、存在しないものになってしまう。それは何があっても避けなければならない」

色々なエピソードが添えられて読みやすく誰もが引き込まれる本だが、中身は甘くない。揺るぎない意志に支えられた、ある意味では「たたかい」の本なのだ、これは。読まれるべし!

さあ、明後日の選挙がおわればもう9月、4年目の生活書院は、そのものずばりの『裁判員制度とは何か』(沖縄在住の弁護士・岡島実さんによる、制度真っ向批判の書。「良心的裁判員拒否のススメ」も載ってます)と、3年越しのラブコールが実った本である、前田拓也さんの『介助現場の社会学』の2点を中心にスタートです。創業の志に常に立ち返りつつ、これからも(できる限り)ブレずに出版と向き合っていこうと思います。変わらぬ応援をよろしくお願いします!


ps:ブログに書いたら「痛風」を心配してくださるかたが結構いる。大丈夫です。毎日呑んでます。以下、近況報告をちょっと…
先週末は、土曜は大学時代の友人の一周忌で池袋で法事。うつを患う友人が本当に増えた。法要は彼を看取ったかたの関係で、日蓮正宗のお寺。日蓮系は初めての体験だったので、南無妙法蓮華経の題目のいつ終わるのかという唱題は、もちろん聞いていただけなのだが、なんというかある種のトランス状態だなーとつい思ってしまった。いやだからどうだというわけではもちろんない。私の田舎は禅寺の村でのんびりしたものなので、まあちがうもんだなあと思っただけである。翌日曜は朝一番の新幹線で大津へ、眠い目をこすりつつ終日学会販売、夜京都へ移動。四条室町の裏通りで安くて美味い店発見し、3000円で酔っ払う。月曜、人と会う仕事は夕方なので、一本原稿を読み終えたあと、あまりに眠いのと疲れたのとでどこか休める場所はないかしらんと考え、何年振りかで映画館に入ることに決める。私は最近ラジオばっかり聞いていて、けっこう真っ当なことを言う人だと思っているライムスター宇多丸さんが、あるラジオ番組で絶賛していた、細田守監督の『サマーウォーズ』を観た。これは良かった! やや説教臭いところがあるにはあるが、補って余りある爽快感。それと、別に昔っぽい情景が出てくるからということだからではなく、小津安二郎の映画のディテールの扱い方が好きな人なんかには最高じゃないかしらん。鼻づまりもすっきりしたところで、夕方の打ち合わせへ。終わって、最終の新幹線の時間まで呑みへ。お付き合いいただいた上にご馳走になってしまった。また今度おかえしせねば…。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seikatsushoin.com/seika/mt-tb.cgi/105

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2009年08月28日 15:42に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「京都で前後不覚になるの巻」です。

次の投稿は「保護観察付き執行猶予――裁判員制度とは何か」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Creative Commons License
このブログは、次のライセンスで保護されています。 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス.