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2009年01月 アーカイブ

2009年01月09日

年のはじめに 三度

生活書院3度目の年明けです。

年初、すこし気持ちがザワザワすることが続いている。

2、3日前の新聞に、最近子ども達の間で、ターゲットの子どもを揶揄し、いたぶり、差別する言葉として「ガイジ」が使われているという記事があった。少し前は、「シンショー」が、同じようなニュアンスをもつ言葉として使われていたように思う。「障害」が、カタカナの、柔らかだけれどだからこそより抑圧的、暴力的な響きを伴う言葉になることで(でも明らかにそれは「障害をもつ子」をもともとは意味する言葉)、その言葉そのものが体現する意味内容を超えて、より広範に、コミュニテイから排除したい人を措定する言葉(「いじめ」の対象に対してのなど)になっている。このことは何を意味しているか。「障害」を「障碍」、「障がい」、「しょうがい」と表記してそれでまずは良しという話でもないように(それぞれの表記の主張はもっともではもちろんありますが)、それは思われ……。

それとは少し文脈が違うけれど、起きてしまった個別の本当にそれ独自の事柄も、あっという間に何か一般的な問題であるかのようにすり替えられ、安易に容易に、思考をムリヤリ停止したかのように、「○○だから、やっぱり」、「閉じ込めろ」、「危険だ」の合唱に転化してしまう。
違うでしょ。そうじゃないでしょ。落ち着いて考えればわかるでしょ。そのせいにすれば安心なのかも知れず、そのせいにすればその人たちを枠の外に置けて嘘っぱちの「安寧」とかを、あなたは得るのかも知れないけれど、それは心底間違っている! でしょ。
このことだけは、何度でも何度でも言う。言わねばならない。そうした「一般化」で、たまらなくも、せつなく悔しい思いをしてきている人たちがどれだけいることか……。

ザワザワすることはたくさんある。でも、向き合いつつ誠実に一つ一つ、自分に問題があれば(それはあるに決まっているが)そこを何とか引き受けて、でも理不尽は蹴散らしつつ、今年も、ということなのだろう。幸い、様々の応援もいただき仕事は暮れも正月もなく忙しい。2月には、立命館大学生存学研究センター編の雑誌『生存学Vol.1』も小社より創刊。乞うご期待(詳細告知は後日)!

2009年01月26日

にんじん*1

しばらく別の部屋に置いて見ないことにしているテレビだが、ミーハーな私ゆえ、某国大統領就任式はちょっと見てみようと思い、見はじめたらついつい2時半ぐらいまでテレビの前にいることとなった。あれ以来、どうも体の調子が悪い(熱はないのに咳がずっと止まらない)、けっこうそういう人が多いらしく、ラジオなど聞いていると、複数の司会者(パーソナリティって言うんでしたっけ)が、「5時まで見ていて風邪引いた」とか「のどをやられた」とか言っていた。すごく忙しいのだから、早く体調を戻さねばと思うのだが、忙しいのだから休めなく、必然、体調は戻らない。それはともかく、少しは世の中変わるのだろうか。まあ、彼我を比べこちらの国のA首相を振り返り見れば、どうしたってあちらに少しは期待したくなるというものだろう。単純な「これが正義だ。民主主義だ」の硬直した態度からは少なくとも少し離れたと信じたい。

私はピーマン*2は好きだが、パプリカはどうしたって好きになれない。パートナーは漬物が一切食えない(東北生まれの「くせに」となりがちだが、この「くせに」がかなりいけない)。友人はやはり漬物が食えず、さらに海草も食えない。どうしても受け付けないものって、ひとそれぞれあるのだ。

なのに必ず、「なぜこんなに美味しいものを?」とか「体にいいのに」とかいうことになり、しまいには「みんな誰でも好きなのに…」などと言い出す。とても無邪気に信じられないという口ぶりで言うので、よけいに怖くなる。やれやれと思う。「みんな誰でも好きだ」、「みんな誰でもそう言っている(信じている)」といった物言いぐらい、気持ちが冷え冷えとしてくるものはない。
体にあわない。何か嫌な思い出なりを引っ張りだすことに繋がって、気分が塞ぐ。そんな思いまでして、嫌なものを食べる必要はない。それはわがままでもなんでもない。

自分が美味しいと思うもの、世間が美味しい(良い)と言っているものが、ある人や、あるコミュニティや、ある何々、ある何々にとっては、とてもとても「いや」なものであるかもしれない。少しの想像力をもって、少しだけそんなことを意識のうちに入れるだけで、だいぶ世間は楽になる気がする。そして、もちろんそれは食べ物のことだけではない。


*1 その漫画の冒頭で作者の樹村みのりさんが言っているように、ルナールのそれではなく、樹村さんが1969年に描いた15ページほどの短編漫画。70年代末から80年代はじめ、すごく好きだった漫画家で(今でももちろん好きで何度引っ越しても樹村さんの漫画本は捨てたり売ったりしたことがない)、この「にんじん」が入っている短編集『雨』(サンコミックス)を手に入れたときは結構嬉しかった。今回のブログは「にんじん」をなぞっただけのようなもの。

*2 小津安二郎『東京物語』に、原節子さんが隣人から「ピーマンの煮たの」をもらって、笠智衆さんがそれを肴に、一合徳利の酒を、美味そうにゆっくりとゆっくりと呑む、有名なシーンがある。あんまり美味そうなので、その後なんどか「ピーマンの煮たの」を作ってみたが、あまり美味くはなかった。

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